白い雪をざくざく踏みながら、ナツキと適当に広場をぶらつく。ナツキは雪祭りの景色全部をきょろきょろ見回して、雪像のひとつひとつに立ち止まる。あんまりしゃべらないけど退屈はしてないみたいだし、むしろその逆? 黙ってじっと雪像を見つめてるナツキを見てると、なんか子どもみたいだなーと思う。でも実際ふたつ下だ。
アイドル活動を続けるうちにナツキのことも少しずつわかってきた。あまり笑わないけど、不機嫌なわけではない。わりとボーッとしてる。無口だけど、結構優しくていいやつ。
「……ハルナ。あれ……」
ナツキが指さした方を見ると、広場の向こう側に食べ物の屋台が集まっていた。
「お、なんか食う?」
ナツキはうなずくと、
「ハルナは、どう?」
「オレもなんか買おっかな~。せっかく雪祭りに来たんだし雪国っぽいもん食おうぜ!」
「……うん」
それから、2人で屋台が並んでる端から端まで一往復して、結局ナツキとオレはサーモンクリームスープ、ってのを買ってみた。
スープは海鮮の具がいっぱい入ってて味も濃くて、思ってた以上に美味かった。青空の下、雪が積もってる中、紙カップに注がれた熱々のスープをさじですくって飲む、ってのも不思議とすっげー美味い。スープを食べるのに夢中で、ナツキもオレもつい黙ってしまう。
「……見て」
急に、ぼんやりと空中を見ていたナツキが話しかけてきた。
「うおっ」
屋台の屋根の上にカラスがとまっている。
「こんな寒いとこにもいるんだな……」
「俺たちのこと、狙ってる……?」
「マジかよ!? 早く食っちまおうぜ!」
「……でも、スープだから大丈夫……たぶん」
「それもそうか……。は~、一瞬ビビったぜ……」
「……ごめん。ゆっくりで、いいよ」と言うナツキの声は静かに笑っていた。なんだか花が咲いてるみたいにあたたかくて、やわらかい声だった。
スープを飲み終えて、紙カップのゴミを捨てて、そろそろみんなのところに戻ることにした。
散歩くらいの速度で、白い雪をざくざく踏みながらナツキとゆっくり歩く。
「オレ、散歩が趣味なんだよね」
「……うん」
「それ話すと地味!とかよく言われてさ~。あんま共感してくれる人少ないわけ。まあアイドルの履歴書にも書いたんだけど」
「……そうなんだ」
「でも、今日ナツキとのんびり歩いて楽しかった! これも散歩みたいだよな~って」
「……それは、お祭りだから……かも?」
「でもナツキって、祭りとかじゃなくても、結構普段から楽しいこと見つけるの得意なんじゃないか、って思ってさ」
「……そう……?」
「雪像とか、いつまでも見てるんじゃないかってくらいじーっと見ててさ。そうやってずっと飽きないのって、楽しい!って気持ちがナツキの中でずーっと続いてるってことじゃないか、ってオレは思うけど」
「…………そんなこと、初めて言われたな」
ナツキはまた、小さな花が咲いてるみたいに静かに笑った。
「なんか、あんなにゆっくり見てて何考えてるんだろうなーって、気になるっていうか」
「……何考えてるかわからない、は……よく言われる」
「いや、そういう意味じゃなくて! あんなに長い間見てて退屈しないのって、楽しいことをずっと考えていられるからだよなー、って思ったんだよ。それってすごくいいよなーって」
「そう……?」
「だから今日、ナツキと雪祭り回って楽しかったのかもなー」
「……本当? 俺……ハルナが退屈してないか、ちょっと気になってた……」
「そうだったのか? じゃあ楽しかった、って伝えといてよかったな!」
ナツキは少し驚いたような顔でまばたきをすると、
「……ありがとう」
と、春の最初に咲く、花のつぼみみたいな声でそう言った。
一面の雪で景色は真っ白で、その中でナツキが笑った一瞬がすごく綺麗に見えた。
ナツキが嬉しいと花が咲いたように見える。その花は目には見えなくて、空気に溶け込んでる感じがする。そしてナツキはその花に気づいてないような気がする。犬が嬉しいとしっぽを振るみたいに、ナツキが嬉しいと空気に花が咲く。ナツキが花を咲かせると空気があたたかくなる。それは散歩していていい香りのする花を見つけたときの、心が優しくなる感じに似ていた。
アイドル活動を続けるうちにナツキのことも少しずつわかってきた。あまり笑わないけど、不機嫌なわけではない。わりとボーッとしてる。無口だけど、結構優しくていいやつ。
「……ハルナ。あれ……」
ナツキが指さした方を見ると、広場の向こう側に食べ物の屋台が集まっていた。
「お、なんか食う?」
ナツキはうなずくと、
「ハルナは、どう?」
「オレもなんか買おっかな~。せっかく雪祭りに来たんだし雪国っぽいもん食おうぜ!」
「……うん」
それから、2人で屋台が並んでる端から端まで一往復して、結局ナツキとオレはサーモンクリームスープ、ってのを買ってみた。
スープは海鮮の具がいっぱい入ってて味も濃くて、思ってた以上に美味かった。青空の下、雪が積もってる中、紙カップに注がれた熱々のスープをさじですくって飲む、ってのも不思議とすっげー美味い。スープを食べるのに夢中で、ナツキもオレもつい黙ってしまう。
「……見て」
急に、ぼんやりと空中を見ていたナツキが話しかけてきた。
「うおっ」
屋台の屋根の上にカラスがとまっている。
「こんな寒いとこにもいるんだな……」
「俺たちのこと、狙ってる……?」
「マジかよ!? 早く食っちまおうぜ!」
「……でも、スープだから大丈夫……たぶん」
「それもそうか……。は~、一瞬ビビったぜ……」
「……ごめん。ゆっくりで、いいよ」と言うナツキの声は静かに笑っていた。なんだか花が咲いてるみたいにあたたかくて、やわらかい声だった。
スープを飲み終えて、紙カップのゴミを捨てて、そろそろみんなのところに戻ることにした。
散歩くらいの速度で、白い雪をざくざく踏みながらナツキとゆっくり歩く。
「オレ、散歩が趣味なんだよね」
「……うん」
「それ話すと地味!とかよく言われてさ~。あんま共感してくれる人少ないわけ。まあアイドルの履歴書にも書いたんだけど」
「……そうなんだ」
「でも、今日ナツキとのんびり歩いて楽しかった! これも散歩みたいだよな~って」
「……それは、お祭りだから……かも?」
「でもナツキって、祭りとかじゃなくても、結構普段から楽しいこと見つけるの得意なんじゃないか、って思ってさ」
「……そう……?」
「雪像とか、いつまでも見てるんじゃないかってくらいじーっと見ててさ。そうやってずっと飽きないのって、楽しい!って気持ちがナツキの中でずーっと続いてるってことじゃないか、ってオレは思うけど」
「…………そんなこと、初めて言われたな」
ナツキはまた、小さな花が咲いてるみたいに静かに笑った。
「なんか、あんなにゆっくり見てて何考えてるんだろうなーって、気になるっていうか」
「……何考えてるかわからない、は……よく言われる」
「いや、そういう意味じゃなくて! あんなに長い間見てて退屈しないのって、楽しいことをずっと考えていられるからだよなー、って思ったんだよ。それってすごくいいよなーって」
「そう……?」
「だから今日、ナツキと雪祭り回って楽しかったのかもなー」
「……本当? 俺……ハルナが退屈してないか、ちょっと気になってた……」
「そうだったのか? じゃあ楽しかった、って伝えといてよかったな!」
ナツキは少し驚いたような顔でまばたきをすると、
「……ありがとう」
と、春の最初に咲く、花のつぼみみたいな声でそう言った。
一面の雪で景色は真っ白で、その中でナツキが笑った一瞬がすごく綺麗に見えた。
ナツキが嬉しいと花が咲いたように見える。その花は目には見えなくて、空気に溶け込んでる感じがする。そしてナツキはその花に気づいてないような気がする。犬が嬉しいとしっぽを振るみたいに、ナツキが嬉しいと空気に花が咲く。ナツキが花を咲かせると空気があたたかくなる。それは散歩していていい香りのする花を見つけたときの、心が優しくなる感じに似ていた。