(夏旬夏、旬四季旬)ずるい人たち

1週間ぶりに5人の部屋に帰ってきた旬が夏来と四季とイチャイチャ(??)する話
※ほのぼの同棲ハイジョ
※非恋愛だけどCPっぽいです

2026-01-17
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 ナツキは心ここに在らず、といった生返事で僕を出迎えて、一瞬僕に向けた視線をまたすぐ元に戻した。何だよ、それって聞きたかったけど、聞くのはやめておいた。
「……あ、おかえり」
 ナツキの視線の先にはカラフルな装置、というかおもちゃ。透明な容器の中に入ったカラフルな液体がぽこぽこと玉になって、次々と上から下に落ちていく。
 なんだか、いかにもナツキ好きのしそうなおもちゃだ。こいつは昔から、アリの行列とか空の雲とかが動くのをぼーっと眺めるのが好きだった。今もショーウィンドウに張り付く子どもみたいに、リビングの床にしゃがみ込んで、机の上の謎のおもちゃに目線の高さを合わせて、カラフルな液体の玉がぽこぽこと生まれていく様子をかじりついて見ている。
「お土産、そこら辺に置いておくから――」と言っても、
「……うん、ありがとう」
と返す声は、明らかにお土産に関心が向いていない。
 僕が1週間ぶりにロケから帰ってきたのに。なんだよ、ぼーっとして。
しゃがみ込んでいるナツキの向かいにどっかりと座る。右手で頬杖をつく。ナツキがかじりついている謎のおもちゃをなんとなく見やる。2匹のイルカがクルクルと回転しながら色鮮やかな液体の玉を上から下に送っていく。よくできているなと思う。おもちゃの水槽の向こうのナツキの顔を見ると、目が合って、ナツキが笑った。
「……くっ、ふふ……」
「何だよ」
「だって……どうしたの。ジュン……」
「それはナツキが……」
 僕が帰ってきたら、きっと喜ぶと思ったのに。リアクションは薄いし。なのに今はくすくす笑ってるし。なんだか、調子が狂う。
「あーー!! ジュンっちだ!!」
 どたどたと騒がしい声と足音。反射的に小さなため息が漏れる。
「会いたかったっすー!!」と走ってきた勢いごと後ろから抱きつかれる。これはこれで調子が狂う。
「お帰りなさいっすーー!! って、あれれ〜、二人ともオレのお土産、そんなに気に入ったっすか?」
 最近はすっかり我が物顔で密着し続けるようになってきて、振り払う気も失せる。プライベートならまだしも、ファンの面前でもどんどんスキンシップがエスカレートしていくのは勘弁してほしいところだけど、なぜかファンの人たちからのウケはいいのでされるがままだ。
「これ、四季くんが?」
「はいっす! オイルタイマー、カラフルでメガかわいいっしょ! オレたちの家にピッタリのインテリアだと思って買ってきたっす!」
「かわいいというか、まぁ、はい……。確かによくできてはいますね」
「ジュン、シキが水族館で買ってきたの、じーっと見てた……」
「……! それは、僕が見てたのは……」
 と、つい言いかけてしまった。耳がじんわりと熱い。
「……まあ確かに、興味深い動きではあります」
四季くんの体重を背中に感じながら、それとなくオイルタイマーとかいうおもちゃの方に視線を移す。と、水槽越しにナツキが僕を見ていた。いつもの表情だ。じーっと僕を見つめて、幸せそうに柔らかく微笑む。
「……なんか、その顔むかつく」
「えっ……」
 なんだか、5人で一緒に暮らすようになってから、ナツキも四季くんも前より図々しくなった気がする。僕は背中から四季くんを振り払えないし、ナツキがいつもの顔をすると結局安心してしまう。なんだか、僕ばっかりって感じで……ずるい。
 水槽の向こうのナツキの微笑み、その瞳から目を逸らしてピントを外す。オイルタイマーを眺めていれば間が持つ気がしたけど、今度は四季くんの体温と視線を背中越しに意識してしまって落ち着かなかった。四季くんがじゃれてくる動物みたいに僕の後頭部に頬ずりをする。恥ずかしい。胸がじわじわする。くすぐったい。やめてほしい。
 水槽の中では、青いイルカとピンクのイルカが仲睦まじく、液体の玉を上から下へと運ぶ共同作業を続けていた。

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