【創作百合SS】陽炎みたいにきみは


【2026/04/02・追記】捏ねているうちにこの頃とは結構設定が変わりました。あくまで読み切り版的なものだと思ってください……。

最近捏ねている創作百合のキャラのSSです。

【登場人物紹介】
⭐️ピッピ
今回の主人公。僕っ娘。オタク。ロバンナのことが恋愛的な意味で好き。わりと常識人。


⭐️ロバンナ
ピッピの友達で片思いのお相手。弱そう。あざとい。勉強が嫌い。SNSの見過ぎで夜更かしがちなので授業中も良く爆睡している。


⭐️チャコ
ピッピとロバンナの同級生で部活の仲間。ロバンナのことを気に入っていていぢめる(?)が面倒見はいい。 彼女(ケンケン)がいる。


2026-03-13 21:23:52
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 蝉たちの声にひぐらしの声が混ざってきた八月下旬。
 ロバンナからのメッセージ通知が来ると、いつも胸が躍ってしまう。
 しかし、この日のロバンナからのメッセージは何やら様子がおかしかった。
(ピッピちゃん今暇かな?)
(やっぱり忙しいかな?)
(急でごめんね 今すぐ来れる?)
(ちょっと困ったことになってて…)
 心がざわつくが、平静を装って返信する。
(どうしたの?)
(僕にできることなら手伝うけど)
 それから少しの間を置いて、ロバンナからの返事。
(チャコちゃんのお家、わかる?)



「お邪魔しまーす」
「あ! ピッピちゃん!」
 玄関で僕を出迎えたロバンナの後ろからチャコさんがぬっと現れる。
「ピッピ? あんた何で来たのよ」
「あ、えーと、その……」
「……何それ、差し入れ?」
「あ……うん。アイス……」
「ふーん……」
 チャコさんは、僕が手渡したエコバッグの中のアイスをがそごそ物色した後、ロバンナをじとーっ、と見つめる。
 チャコさん特有の睨むような目つきでじーっ……と見つめられたロバンナは、蛇に睨まれたカエルのようにひぃっ、と縮こまって固まる。
「な、何でしょう……」
「あんたが呼んだの?」
「ぇ……」
「あんたがピッピちゃんのこと呼んだでしょ、って聞いてるの」
「ご、ごめんなさい、ぇと、違います、許してください……」
「別に、怒ってないんだけど。嘘つくのやめてくれない?」
「な、何でわかったんですかぁ……」
「別に。鎌かけただけ」
「ぇ、」
「チャコと二人で勉強してるの、嫌なんでしょ」
「い、嫌じゃないですよぅ、私はただ……」
「ただ?」
「く、空気……ピッピちゃんが来てくれたら空気が柔らかくなるかなー……って……」
「ふーん……」
「あ、あの……ロバンナが怖がってるからその辺で……」
「怖がらせてんの」
「何ですかそれ……」
「わ、わたし怖がってません!」
「「それは無理がある」」
 珍しくチャコさんと完全に声がハモった。
「ねぇ、アイス溶けちゃう」
「あ、やばいやばい」
「アイスモナカ、チャコのだから」
「あっ、ポッキンアイス! ピッピちゃん、半分こしよ」
「あっ……うん……」
 他にもたくさんのアイスがある中で、真っ先にそんなことを言ってくれるロバンナ。……いけない。嬉しさのあまり、一瞬口元がにやけてしまったかもしれない。
 ロバンナが僕のことをどれくらい思ってくれているのかはよくわからないけど、なんだか当たり前のように、真っ先に半分こを選んでくれることが嬉しかった。
 ロバンナにとって、僕はどれくらいの“友達”なのかな? それとも、アイスのわけっこって普通に友達同士では全然当たり前のことで、僕が深く考えすぎなのかな……。
「うざ……」
「何がですか……」
「なんか、空気が」
 チャコさんは何を考えてるか、わかりやすいようでわかりにくい。天邪鬼なようで、意外とストレートで素直なようで……やっぱり素直じゃないようで……。
「……アイス食べたら、チャコ、ちょっとケンケンの家行ってくるから」
「え!」
「……ロバンナ。あんたねえ、露骨に嬉しそうにするんじゃ……」
「ひぃっ、」
「ないっ!」
 ロバンナのおでこにチャコさんのデコピンがヒットする。
「い、痛い、痛いよぅ、結構、今の、本気で痛い……」
「じゃ、チャコ出かけるから。帰ってくるまでに数学のプリントちゃんとやっときなさいよね」
「はぃぃ……」
「僕が教えるから……もう少し、がんばろっか」
「はあ……。やっぱり自力でがんばるしかないか……。……ありがと、ピッピちゃん」
「チャコへのお礼はないの?」
「あっ! チャコちゃんもありがとうございます……! 忘れてたわけではないです……」
「……あっそ。そのすぐ出まかせ言う癖、直した方がいいわよ。じゃあね」
 そう言うと、チャコさんはおもむろにロバンナの頭をわしゃわしゃとめちゃくちゃに撫でまくった(ロバンナの綺麗に結われたハーフツインをぐしゃぐしゃにしそうな勢いで)……!
「!? ……ひ、ひゃ、ひゃあっ……! 何なんですかもう……」
 さっきからめちゃめちゃいじめられてた(わけではない、と僕は思うけど……)くせに、チャコさんに撫でられて若干満更でもなさそうに照れているロバンナ。……僕はロバンナの頭、撫でたことなんてないし、そんなことできないのに。
 チャコさんがようやく(なんて言ったら失礼だけど……)出かけて行って、ロバンナはライオンから逃げおおせた草食動物のように、大きくため息をついた。
「……アイス食べたら、続きやろうか」
「……わたし、ずっとピッピちゃんとアイス食べてたいなぁ……」
「……ずっと、って……。ロバンナはまたそんなこと……」
「また?」
 顔がじんわり赤くなっているのに気づいて、僕はカレンダーを見るふりをして、ロバンナから目を逸らす。
 今日の日付は八月二十日。確かにそろそろ宿題に取りかかっておかないとまずいかもしれない。
 チャコさんに勉強嫌いのロバンナの家庭教師役の先を越されていたのは不覚だったけど、これで今日からは毎日ロバンナと一緒にいられる口実ができたようなものだ。
「夏……終わってほしくないね」
「はぁ……宿題やりたくない……」
 チャコさんの前では見せないであろう、情けない声を出してうなだれるロバンナの頭をよしよし、と撫でてあげたかったけど、それはまだ早すぎるかな……と、手を引っ込めて、僕はもどかしい思いをそっと胸に閉じ込めた。

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